Macは高い!
さて前回の記事では、RAW現像に向いたノートパソコンとしてMacBookを紹介した。
しかし、CPUやメモリーの強化(BTO)を頼んで175,800円(税別)、MacBook本体の保険(Apple Care+)なども含めると21万円を超えてしまい、とても高額な買い物になってしまうのが悩みだ。
しかもRAW現像の作業はMacOSで行う 1ので、MacOSの操作にも慣れる必要がある。
ところが、使い慣れたWindowsのノートパソコンでも、RAW現像に向いたパソコンがあるのだ。それが、マウスコンピューター社の「DAIV」シリーズである。
実は今回、マウスコンピュータ社様のご協力により、レビュー用のノートパソコンを2台ほど、お借りすることができたのだ。
使ってみた結果、DAIVはMacBookより安いのに、とても快適にRAW現像が出来たのだ。
今回お借りしたノートパソコンモデルは、一つ目が高解像度(4K-UHD)の17.3型ノングレアディスプレイを搭載した「DAIV-NG7500S2-SH5」(写真左)。
二つ目は、広範囲の色(sRGB比95%)が表現できる15.6型フルHDノングレア型ディスプレイを搭載した「DAIV-NG5720S1-SH2」(写真中央)である。
そのDAIVのメリットやスペック、実際にRAW現像を行ってMacBookと比較した結果などを、この記事で書いていきたい。
なお記事中に書いているDAIVのスペックや販売価格は、「2018年5月31日時点での情報」である。変更となる可能性があるので注意してほしい。
またDAIVの正確な品名は長いので、「DAIV-NG7500S2-SH5」・「DAIV-NG5720S1-SH2」は、それぞれ「NG7500」・「NG5720」と、正確な品名が必要な場合を除いて省略させていただく。
2018年6月1日追記
- DAIVのスペックや販売価格についての注意喚起を冒頭の文へ追加
- カタログファイルの作成先についての情報を追加
2020年11月24日追記
マウス社アフィリエイト終了につきリンク変更
DAIVのメリット
使い慣れたWindowsでRAW現像ができる
Microsoft Windows 10 Home Fall Creators Update適用 32bit/64bit 日本語版 (最新) |パッケージ版 | ||||
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MacBookでも、BootCampを使ってインストールすれば、Windowsが使える。
しかしOSのライセンス(約15,000円前後)を買って、自分でインストールしなければならない。
だがDAIVなら、最初からWindowsがインストールされているので、初期設定を行うだけで、すぐに使える。
MacBookより安いモデルがある
例えば筆者が購入したMacBook 2017 カスタマイズモデルは、さっき述べたとおり本体価格だけで175,800円(税別)もした。ちなみにCPUはCore i5 7Y54 1.3GHz、メモリーは16GB、内蔵SSDは256GBである。
しかし今回お借りしたノートパソコン「DAIV-NG5720S1-SH2」は、私の買ったMacBookより高性能なのに169,800円(税別)とお買い得なのだ。
こちらはCPUにCore i7-7700HQ、メモリーは16GB、SSDは256GBに加えてHDDが1TB。それに加えてGPUにGeForce GTx1060 3GBが使われていて、かなりMacBookより充実しているのだ。
しかも液晶ディスプレイは15.6型と画面が広い。だから、RAW現像するとき便利だ。
ちなみに、このスペックは「MacBook Pro 2017 15インチモデル」(型番:MPTR2J/A)に近いが、こちらは本体価格258,800円(税抜)と超高価だ。
USBやHDMIがそのまま使える
DAIV-NG5720S1-SH2とDAIV-NG7500S2-SH5は、標準サイズのUSB3.0ポート(TYPE-A)やHDMIポートが用意されている。このため変換アダプターが不要だ。(ただしmini DisplayPortは、変換アダプターが必要。USB3.1 TYPE-Cで標準サイズのUSBを使うなら変換アダプターがいる)
Amazonベーシック 変換アダプター ミニディスプレイ-HDMI L51G | ||||
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iBUFFALO USB3.1Gen1変換アダプタ(AメスtoC) ブラック BSUAMC311ADBK | ||||
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DAIV-NG7500S2-SH5の場合(タップかクリックで詳細)
DAIV-NG5720S1-SH2の場合(タップかクリックで詳細)
MacBookの場合は?
エレコム USB3.1 Type-C ハブ 3ポート(A×2/Type-C×1)+HDMI出力+PC充電用Type-C×1 バスパワー ブラック U3HC-DC03BBK | ||||
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薄さを最優先にしたMacBookは、充電ポート(Power Delivery)も兼ねた最新規格のUSB TYPE-Cポートしかない。だから充電しながらUSBが使えないのだ。またHDMIは、専用の変換アダプターやUSBハブが必要になる。
SDXCカードリーダーが本体内蔵
正確にはDAIVに搭載されている「マルチカードリーダー」は、SDXCやSDHCを含めたSDメモリーカードと、マルチメディアカード(MMC)が読み書きできる。
この記事で使われている写真は、ほとんどが実際にお借りしたDAIV-NG57230S1-SH2を使って編集してからJPEGに出力している。デジタル一眼レフで撮ったら、すぐにSDXCカードリーダーでカードを読んで取り込み、その場でRAW現像できたのでとても助かった。
カードリーダーを別に用意すればMacBookでも可能だが、DAIVは本体に内蔵されているので便利だ。
エレコム カードリーダー USB type-C USB3.1 Gen1 9倍速転送 ケーブル一体タイプ Mac用 ブラック MR3C-AP010BK | ||||
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お借りしたDAIVのノートパソコン
この節では、実際にマウスコンピューター社さまからお借りしたノートパソコンのスペックについて書いていく。
なお二度目となるが、これらの情報は「2018年5月31日時点での情報」であり、製品の仕様や販売価格は、変更となる可能性があることに注意してほしい。
DAIV-NG7500S2-SH5
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Core i7-7700HQ
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16GB PC4-19200(8GB×2/DDR4-2400 デュアルチャネル)
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SSD 512GB(M.2 SATA3)
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HDD 1TB SerialATAII 5400rpm
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GeFroce GTX1070 8GB
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17.3型4K-UHDノングレアディスプレイ 3840×2160
DAIV-NG5720S1-SH2
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Core i7-7700HQ
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16GB PC4-19200 (8GB×2/DDR4-2400 デュアルチャネル)
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SSD 256GB(M.2 SATA3)
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HDD 1TB SerialATAII 5400rpm
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GeForce GTX1060 3GB
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15.6型フルHDノングレアIPSディスプレイ(sRGB比95%)1920×1080
LightroomによるRAW現像テスト
Lightroomを使ったRAW現像のテストには、とある動物園で撮った157枚のRAW画像を使ってLightroomのカタログファイルを作った。
その後スマートプレビューとJPEG出力をそれぞれ3回ずつ行って、その平均処理時間を求めた。以下が、その結果をグラフに示した図である。
一枚目はスマートプレビュー作成、二枚目はJPEG出力だ(タップかクリックで画像が大きくなるので、よく見てほしい)
なお、これらの作業はすべて外付けSSDにて行い、パソコンに内蔵されたSSDやHDDの影響をできるだけ避けた。
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DAIVはMacBookより早かった
先ほどのグラフを見ればよくわかるように、高速なCPU(Core i7-7700HQ)を積んでいるDAIVのノートパソコンが、圧倒的に早く作業を終えたのだ。
デスクトップパソコンは5年以上前の古いCPUが使われているので、スマートプレビュー作成で1分48.19秒、JPEG出力で5分28.39秒と多少遅いのは仕方がない。(それでもCore i7 2600だからか、かなり健闘している)
しかしMacBook 2017カスタマイズモデルは、スマートプレビューでも4分47.1秒、JPEG出力では8分33.1秒と非常に時間がかかった。
あまりの悲惨な結果にとてもショックだった。
その原因はおそらくMacBookのCPUにあるだろう。MacFan 2017年8月号によれば、タブレット向けのCPU(Kaby Lake世代)を搭載している 2からだ。
なおMacBook Pro 13インチモデルや15インチモデルでは、より高性能なCPUが搭載されている。特に15インチモデルはDAIVノートパソコンと同等のCPUが積まれているので、ここまでの差は出ないと思われる。
圧倒的な性能を誇りながら、同じくクリエイター向けを提唱するMacBookやMacBook Proより安く買えるというのは、コストパフォーマンス的にとても優れていると思う 3。
比較に使ったパソコン
MacBook 2017
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型番:MNYF2J/A
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CPU Core i5 7Y54 1.3Ghz(グレードアップ)
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メモリー 16GB 1600MHz LPDDR3 (グレードアップ)
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SSD 256GB
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CPU内蔵GPU(Intel HD Graphics 615)
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12型Ratina ディスプレイ 2304×1440
メインパソコン
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Core i7 2600
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メモリー 8GB DDR3 1333MHz(PC3-10600) 4GBx2
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SSD 256GB(増設)
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HDD 500GB SATAII(標準装備)+3TB(増設)
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Geforce GTX 750Ti(増設)
ディスプレイ
DAIV-NG7500S2-SH5は4K-UHDに対応した17型ディスプレイ、DAIV-NG5720S1-SH2はフルHDに対応した15.6型のIPSディスプレイが使われている。
ここで言う「IPS」とは液晶ディスプレイの制御方式の一種で、どの方向から見ても見え方が変わりにくい(視野角が広い)特徴を持っている。NG7500S2-SH5にはその表記が見当たらないが、マウスコンピュータ社の担当の方によると、「IPS仕様ではないが、視野角が広いタイプの液晶ディスプレイを使っている」だそうだ。
またどちらもノングレアタイプのため、蛍光灯や周りの背景が映り込みにくいので、目に優しい。ちなみにRatinaディスプレイ(IPS仕様)のMacBookやMacBook Proの場合、そのままだと画面に反射してしまうので、ノングレアタイプのフィルムが必須だ。
そしてNG5720S1-SH2のIPSディスプレイは、「表現できる色の面積(色域)がsRGB比にして95%」という性能を誇っている。これは、「色域の国際的な規格である『sRGB規格』と単純に比べて」95%の広さを持っているのだ。
なお、今回お借りしたNG5720は、個体差なのか、sRGB比102%の広さだった。
X-rite エックスライト ディスプレイキャリブレーションツール i1Display Pro アイワン・ディスプレイプロ KHG1035 | ||||
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もし「どれだけsRGB規格の色域を表現できるか(sRGBカバー率)」を知りたいならば、専用のセンサー(キャブリレーター)を使って調べなければならない。
センサーで測定すると、ディスプレイの仕様書(ICCプロファイル)が作られる。
この情報を元にしてLightroomやPhoshopなどが、そのディスプレイでRAW現像や画像編集をするときに、見た目の違和感がないように調整してくれるのだ。
MacBookもそうだが、正確なRAW現像をするときには、是非ともキャリブレーターを導入したい。
現像画面とカタログ画面の比較
Lightroomでは、撮った写真をカタログファイルにまとめて管理する。
それらを「カタログモジュール」で一覧にして表示して、加工したい画像を選ぶ。
そして「現像モジュール」という工程で、トリミングや色合いを調整したりする(RAW現像)。
実際にNG7500(一枚目)、NG5720(二枚目)、MacBookでRAW現像の画面を表示させた写真を下に載せておく。
実は先日、旅行中にMacBookでRAW現像する機会があったが、12インチのディスプレイではカタログ画面から画像を選ぶのも一苦労だった。
その点、DAIVはDAIV-NG7500S2-SH5が17型4K-UHDディスプレイ、DAIV-NG5720S1-SH2は15.6型IPSディスプレイが使われている。
このため、カタログファイルに入れた記事に使う大量の画像から一つ選んで、RAW現像するときに広くてとても快適だった。
ところでDAIV-NG7500S2-SH5は、そのままでは一度に表示されるカタログの画像がDAIV-NG5720S1-SH2より少なく感じる。
これはWindows 10の方で、ウィンドウなどを拡大するよう設定されているからだ。
高解像度の4Kディスプレイを搭載している都合上、100%の表示だと字がとても小さくなるのだ。
だから、もし大量の画像を一度に見たいときは、Windows 10の設定を変える必要がある。
これは、「Windowsの設定」から「システム」を選び、「テキスト、アプリのアイコン、および他項目のサイズの変更」を操作すれば可能だ。その画面については、上に載せた図を見てほしい。(クリックかタップで拡大される)
NECのサイトがわかりやすく説明しているので、ぜひ目を通して欲しい。
ノートパソコン本体の重さと厚み
前回の記事でも書いたが、MacBookやMacbook Proは、薄くて軽いのが特徴だ。
ところがDAIVのノートパソコンは、かなり大きくて重たかったのだ。
左からDAIV-NG7500S2-SH5(17型)、DAIV-NG5720S1-SH2(16型)、MacBook 2017(12型)である。奥にあるACアダプターも、同じ順番に並べている。
実際にノートパソコンの重さをはかったところ、MacBookはケース込みで1.1kgだったのに対して、NG7500は3.1kg、NG5720は2.8kgと、MacBookの2倍から3倍ぐらいの重さだったのだ。
しかも本体の厚みは、NG5720を計ってみると3cm前後で、計り忘れたがNG7500もそのぐらいだった覚えがある。MacBookより厚いのだ。
また実際に持ってみた感想では、NG7500は普段持ち歩くのには苦しく、NG5720はギリギリと感じた。
そしてACアダプターも、DAIVは別にGPUを積んでいるので大電力が求められるからか、とても大きくて重たかった。大きさ比較のため置いた一眼レフ 4とiPadと比べて欲しい。かなりDAIVのACアダプターが大きいことが分かるだろう。
実際に重さを計ったところNG7500用が1060g、NG5720用が1028g、MacBook 2017用は168gだった。
ACアダプター込みで考えると、DAIVはどちらも約4kg、MacBookは約1.2kgと重さが4倍近くの差があるのだ。
性能では負けたが、モバイル性ではMacBook 2017が有利だ。性能の高いMacBook Pro 2017も、13インチモデルなら本体重量だけで1.37kg(MacFan 2017年8月号より)なので、比較的これも軽い。
リュックやカバンに入れて旅行へ持って行くなら、やはりMacBookや高性能なMacBook Proがいいだろう。
総評
コスパならDAIV、持ち運び重視ならMacBook
CPUやメモリーのカスタム代も含めて21万円もかけて購入したMacBookより、DAIVの方が圧倒的にコストパフォーマンス的には有利だった。
もっと詳しくDAIVについて知っていれば、MacBookよりDAIV(特にNG5720)を選んでいたと思う。
私のお気に入りであるDAIV-NG5720S1-SH2は、sRGB比95%の高精度なディスプレイを載せているので、場所を選ばずに本格的なRAW現像が行えるのがメリットだ。
また4K-UHDディスプレイを搭載しているDAIV-NG7500S2-SH5は、例えばRAW現像だけでなく動画編集もしたいときに選ぶと良いだろう 5。
そして薄くて軽いMacBookは、持ち運びを重視するときに向いている。もし予算に余裕があれば、より高性能なMacBook Proを選んだ方がいいだろう。
謝辞
今回のレビューは、マウスコンピューター社さまのご協力がなければ実現できなかった。
レビュー機材のお声を掛けてくださった担当のKさんには、この場を借りて御礼申し上げる。
ありがとうございました。